マンザナーの強制収容所跡地を出発したのは午後4時ごろ。国道395号線をさらに北上してビッグパインの町で168号線に右折、シエラ・ネバダとは395号線を挟んで向かい側にあるホワイト山脈に突入しました。ホワイトマウンテン・ロードに入り、くねくねの山道を辛抱強く走ることしばし。5時半すぎに目的地の Ancient Bristlecone Pine Forest の駐車場に到着しました。
ここは地球一長寿の樹木、ブリストルコーン・パイン(日本名はイガゴヨウマツだそうです)が生息する森で、樹齢4000年を超える古代松を見ることができます。昨年、この保護区内で発見された最高齢と思われる木はなんと樹齢5065年。紀元前3051年に発芽ということになり、古代エジプトでさえまだ初期王朝時代で、ピラミッドなんてまだまだ未来の話という大昔です。
ビジターセンターのある駐車場は、2種類のループ状のハイキングコースの発着点でもあります。樹齢約4800年の Methuselah と呼ばれる木がある Methuselah Walk(全長4.2マイル)も惹かれますが、日没まであまり時間がありません。スタート地点からして標高3000メートルという高地ハイキングだし、無事に生還できる可能性の高い Discovery Trail(全長1マイル)を選びました。
前半は上り坂。ちょっと歩いたらブリストルコーンらしき木が見えてきました。一見枯れているみたいに樹皮が乾いていて、幹はくねくね。高地の乾燥した土壌で積雪や強風に耐えながら極端にゆっくり成長する特性があるらしく、樹齢4000年を超えてもそれほど大きな木にはならないそうです。これは何歳ぐらいなのかな。
横に倒れている人がいたので、近づいて接写。長い年月が生んだうねりが、まるで芸術作品のようです。しかもよく見ると根っこは地面につながっていて、まだ生きていることを示しています。すごい。
だんだん息切れがしてきました。コースの頂上まであと100ヤード(約90メートル)の看板が見えました。がんばるぞー。
ブリストルコーンも応援してくれているように見えます。それにしても「斜面+岩」という、ものすごい条件の場所に立っていますね。その生命力、ちょっとでいいから分けてほしいものです。
後半の下り坂は風景がガラリと変わりました。赤茶色の岩石(?)はもともと海底に堆積していた泥岩だそうで、そういう意味ではブリストルコーンよりも圧倒的に古い産物です。それに比べたら人間なんて…ていうか、遠くに見える山々って、もしかしてシエラ・ネバダじゃなくてホワイト山脈? この後、またあれを越えて395号線に戻らないと泊まる場所が見つけられないってこと? ちょっとロマンティックな気分になっていたのに、一気に現実に引き戻されました。
でもそんな現実も、この木が目の前にドドーンと現れた瞬間に吹き飛びました。これは誰もが写真を撮りたくなる光景でしょう。ねじれにねじれながら、それでも空に伸びていく力強さ。今日の宿なんてどうでもいいから、ずっとこの木を見ていたいと半ば本気で思いました。
反対側からも一枚。生命体の神秘みたいなものを感じます。自然はすごいです。
後ろ髪を引かれる思いで神秘の古代松に別れを告げ、残りわずかのハイキングを再開。心なしか手を振ってくれてる? 絶対にまた来るぞ〜と心に誓いながら駐車場に着くと、三脚とカメラを背負った男性が終着点からハイキングコースに入っていくところでした。きっと、あの木を撮るんでしょうね。星空の下や雪が積もった日に撮ったら、ますます神秘的に写るんだろうなぁ。(ちなみに冬は積雪で山道が封鎖されてしまうので、シーズンは5月中旬〜11月だそうです)
地図を見たら395号線に戻る近道があったので未舗装ですが進んでみました。そしたら窓の外にダイナミックな雲が見えたのでパチリ。この道は途中から急勾配の本格的なオフロードになってしまい、結局来たときと同じ道を通って下界に戻る結果になりましたが、なにごとも経験です。この辺りで一番大きな町、ビショップでモーテルを見つけ、デニーズで夕食を食べながら今日1日を振り返りました。SF映画の砂漠から日系収容所を経て、地球一長寿な古代松の森を歩いてデニーズ。旅って不思議です。(続く)(前回の記事はこちら)
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